育児をするメンズ、通称”イクメン”。
筆者の言うイクメンの”罠”とは何なのか。
知人が読んで勉強になったという本を教えてもらいましたので、今回シェアします。
帯にはこんなサブタイトル。
「子どもが3歳になったら”イクメン”を卒業して”父親”になりなさい。」
そして、そうでなければ思わぬ弊害を子どもがこうむることになると。
「はたしてしっかり父親にはなれているのだろうか」
僕も自分に問いながら読んで大変勉強になったので、何かひとつでも学びになれば幸いです。
はじめに
作者:榎本博明さんの本を僕が手に取るのは、2度目です。
東京大学を卒業後、大阪大学大学院助教授などを経て、MP人間科学研究所代表を務める心理学博士です。専門分野は子育て、教育、人間関係。
1冊目は「伸びる子どもは〇〇がすごい」でした。
子どもが生まれたときに子育て本を読み漁り、その中で手元に残しておきたいと感じた1冊です。
12歳までの教育の重要性、非認知能力や習慣形成によるレジリエンス(忍耐力)向上など勉強になりました。
そして、今回2冊目の「イクメンの罠」という本。
一言でいうと、心理的観点からみた親の変化と子どもの自立をテーマにした内容です。
その中で筆者は重要になるのが「父性機能」だといいます。
母性と対になるのが父性。
要は母なる愛と父なる厳しさ、という意味です。
子育てのゴールとは何だと思いますか。
それが「自立」です。
そのためにどんな困難でも力強く社会を生きていけるように、心を鍛え育てる必要があります。
そのために注目するのが「父性」です。
子どもが3歳までは、やさしく包み込む母性重視。
3歳からはせめて父親だけでも父性を強めた子育てをするべきだと筆者はいいます。
三つ子の魂百まで、と言われるゆえんは、3歳までたくさんの愛情を受けて育った子は、根拠なき自信から、チャレンジ精神にあふれ、自立できるようになると何かで読みました。そのため3歳ごろから厳しく接しても、それまでたくさんの愛情を感じてきたからこそ、厳しさの中に愛を無意識に感じ、親の真意を受け取るのだと考えます。
そこで本書では、子どもが3歳になったらこのように導くといいですよと提案しています。
そのヒントが下記の8つ。
- 挨拶をすること、お礼を言うこと
- 我慢をすること
- 簡単にあきらめないこと、我慢をすること
- 相手の気持ちを想像する習慣をつけること
- いろんな友達と遊ぶこと
- 結果を気にせず挑戦すること
- 読書習慣を身につけ、好奇心をもつこと
- 働く姿をみること、知ること
順番に解説していきますが、その前に前提2点を確認してください。
前提1:叱らない子育てのウソ、「叱るとトラウマになる」は間違い
子どもを大切に思うあまり、叱ることでトラウマになるのではないかと心配する方もいます。
しかし、筆者はそれは間違いだと指摘します。
叱ること、躾けることを虐待や暴力と同じくくりにしているからです。
モラルやマナーを守るように、すべきことはきちんとする、ダメなものはダメ。
自分の過去を振り返ってみても、当時は叱られて嫌な気持ちになったが、今は納得できるものが多いですよね。
親からこうするものだと言われて、社会性がようやく身に付くのです。
逆に、言われなければきっと精神が未熟なままで、誰にも求められない大人になっていたでしょう。
なので、前提の1つ目は親として「当然に叱る」ことです。
前提2:叱って関係が崩れないように日頃から関係性をつくる
筆者は小さい頃から身体を使って遊んだり、じゃれあったりして日常的にふれあいをもつことが大事だと言います。
日頃からあまり話さず、情緒的なつながりが希薄で、ふいに厳しいことを言えば反発するのは当然ですよね。
頻繁に散歩に出かけ、抱っこせず、自分の足で歩かせる。
弱音を吐いても応援して、よく頑張ったねと褒める。
子どもの頑張りを報わせたり、親に認めてもらったりすると子どもはうれしいものです。
そういった情緒的なつながりを丁寧に紡いでいくことで、叱ることの効果が最大化されます。
なので、前提の2つ目は「子どもと関係性を築く」ことです。
では、次の章から8つのヒントを順番に解説していきます。
①挨拶をすること、お礼を言うこと
挨拶やお礼の言葉は、社会生活を送るうえで必要な基本的マナーです。
人間関係を円滑にする潤滑油のようなもの。
それができる子とできない子とでは180度印象が違ってきます。
愛される子の特徴にも同じ内容がでてきました。
詳細はこちらの記事へ。
その模範を日常的に親が示すようにしなければならないと筆者は言います。
- 近所の人へのあいさつ
- 外食先でのごちそうさま
- 家族間でのおはよう
- 友達へのごめんなさい
- 祖父母へのありがとう
子が親の真似をすることを心理用語でモデリング効果といいます。
わが子が社会たくましく生きてほしいと願うなら自らが模範的になると心得ましょう。
②我慢をすること
子どもが集団生活の中で学ぶもの、その一つが欲求不満です。
わがままな子、意地悪な子、要領の悪い子などと一緒に生活することで、思うようにいかないことを経験します。
小学校では、思うように勉強ができない、人間関係が構築できないなど、さらなる課題が増えます。
そういった欲求不満に耐える力を身につけさせる必要があるのです。
はじめは小さく、おやつを買ってあげるときに決まりをつくって我慢させる。
約束を守って、なぜ欲しいかを説明出来たら、買ってあげる。
様々なできごとを成長させる機会ととらえて経験を積ませましょう。
③簡単にあきらめないこと、我慢をすること
思い通りにならないからとあきらめては人生はうまくいきません。
投げ出さずに改善をかさね、頑張りぬく力も必要です。
「グリット(やり抜く力)」と言われたりもします。
口で言うだけでは、身に付きません。
親の背中を見て、子どもはマネをして、同じ行動をとります。
困難にぶつかっても「なんとかなる」「やってみないとわからない」という姿勢であれば、子どももそうなる。
子どもと遊んでいるときでも、逆上がりの練習でも、勉強でもそういった前向きな姿勢を意識的にとろう。
④相手の気持ちを想像する習慣をつけること
オーストリアの心理学者、アルフレッド・アドラーは以下のような言葉を残しています。
「すべての悩みは、対人関係の課題である」
対人関係の問題をクリアするために、筆者は友達へなげかける言葉に注目しています。
親が家庭で使っている言葉を、子どもは使うようになります。
保育園でも友達を「おまえ」と呼ぶ子は、家でもそのように言われているのでしょう。
乱暴な言葉遣いをする親の子どもが、丁寧な言葉を使うようになるでしょうか。
そのため、日頃から親が相手を思いやる言葉を使わなければ、子どもがそのように育つことはありません。
「〇〇ちゃん、褒められてうれしそうだったね」
「あなたが〇〇と言って、あの子はどんな気持ちだったかな」
絵本を読んでいても、なぜ泣いているのかな、楽しそうだね、さみしかったのかなと添える一言で子どもは想像します。
日常の何気ないやり取りで、共感の視点を取り入れるような言葉がけを意識するようにしたいです。
⑤いろんな友達と遊ぶこと
子どもは遊びの中で学び成長します。
何かに夢中になることで、自発性と集中力が養われ、それは将来に必ず活きてくるのです。
そのなかで友達と競い合ったり、協力しあったりする。
年齢が上のおにいちゃん、おねえちゃんとどう接するのがよいのか。
年齢が下の子とはどのように遊べばよいのか。
そういった創意工夫やアイデアを持つようになるため、いろんな友達と遊ぶことはとてもよい経験です。
人との距離のとり方を感覚的に知っておくことは、社会に出てうまくやっていく必須能力になります。
そういった意味でも幼いころからいろんな友達と遊ぶ機会をつくることをしてあげたいです。
⑥結果を気にせず挑戦すること
近年はテクノロジーが発達しVUCA時代などと呼ばれ、ますます予測不可能な時代です。
筆者はそんな時代に必要なのは、失敗を怖れずに試行錯誤していく姿勢だといいます。
失敗に傷ついてもすぐに立ち直れるようにレジリエンス(耐性)を高める必要があるのです。
そのためには失敗をする機会を多く与えます。
最近は親が先回りして失敗を取りのぞくように行動するひとが多いと筆者は指摘します。
そうではなく、失敗したときに委縮しないよう失敗の効用を説くのです。
「最初からうまくいく人などいない」
「失敗した分だけ成長するから怖くない」
こうした言葉がけひとつで、子どもは全力をだせます。
親も挑戦する姿や失敗する姿を見せ、一緒に成長できたらいいですね。
⑦読書習慣を身につけ、好奇心をもつこと
なぜ読書習慣をつけさせるのが大切なのか。
一般的には語彙力や読解力が高まり、人の話をよく聞き、問題の意図を読みとれるようになるから。
でも、他にも重要な理由があると筆者は言います。
それは、友達の言い分を理解したり、気持ちを理解したりできるようになるからです。
登場人物の言動に疑問を持ち、その気持ちがわかるようになる。
多くの登場人物の人生・心理に触れることで、いろんな考えがあることを理解する。
本を読む習慣のない子が大人になって本を読むでしょうか。
最新の研究でも、読書が学力と密接なかかわりがあることは明らかにされています。
そのため幼い頃から習慣づけておく必要があります。
読書に限らず、知的好奇心を刺激してあげましょう。
美術館、博物館、科学館などに連れ出す。
どこにどんな発見があるかわからないので、いろんな場所に種をまいておくことをしてあげたいです。
⑧働く姿をみること、知ること
筆者は最後に親が頑張っている姿勢を見せておくことをおすすめしている。
体験談ですが、僕が中学生のころ母が簿記を勉強していて、親も勉強するんだと思ったことがあります。
毎日仕事と家事育児で大変なのに、頑張っている姿はとても印象的でした。
大変だけど頑張らないといけないときがある。
そのことを親の姿勢を通じて理解していれば、親の言動に説得力が生まれます。
「お父さんはこんな仕事をしているよ」
「お母さんもお仕事頑張っているよ」
いざというときに子どもの力になれるように、しっかり子どもの心を捕まえておきたい。
さいごに
以上が子どもの自立を促す「父性」を活かした8つのヒントでした。
榎本博明先生の本は定期的に見直して、ふりかえりたい内容です。
今回の「イクメンの罠」も考えさせられる内容でした。
愛を注ぐだけが親の務めではありません。
その子の将来を考えて、ときに厳しく、ときに優しく接することが大切だなと感じました。
それ以外にもデータやファクトをもとに罠に落ちないための情報がたくさん。
気になる方は、ぜひ手に取ってみてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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